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Paul McCartney
〜Driving Japan〜 2002

西山正義



 平成14年11月14日、ポール・マッカートニーのコンサートに行ってきた。17、18日に大阪公演があるが、日本ではこれが見納めになるかもしれない。
 東京ドームでの楽日。先行予約のS席にもかかわらず、あまりいい席ではなかった。アリーナではなく2階席。ただ、ステージを正面やや上手方向から見下ろすような場所で、前の席とは落差がかなりあるので、見やすい席ではあるのだが、いかんせ遠いし、どうせよく見えないのなら、アリーナでノリノリになった方がいい。
 まあ、それはともかく、お定まりのように定刻よりやや遅れて、まず仮装パーティー風の「プレ・ショー」から始まった。趣向としては面白いのだが、ちょっと長過ぎる気がした。しかし、この時点では、会場内はまだ出入りの人でざわついていたので、一種の前座として丁度いいくらいなのかもしれない。
 平日である。もちろん若い人もいるが、予期していた通り、年齢層は高めである。会社帰りの、頭の禿げ上がったオッサンもいる。団塊の世代の、昔の「ニューファミリー」夫婦もいる。当然だ。ポール自身が60歳!なのだから。厳密にいえばビートルズ世代より一世代下の僕ら夫婦にしたって、決して若いとはいえない。いや、そんなことはどうでもいい。ポールは、やはりビートルズのあのポールだった! それだけでいい。
 プレ・ショーが終わり、暗転、一瞬の間、例のヘフナー・ベースを抱えたボールのシルエットが映し出される。そして、「ハロー・グッドバイ」からスタート。ウオォォォー。
 2曲目はウイングス時代の「ジェット」。懐かしいという点では、個人的には一番懐かしい部類に入る曲である。リアルタイムで聴きはじめたのは、実はこのあたりからである。アルバム「バンド・オン・ザ・ラン」は1973年の発売だが、この曲がシングルカットされたのは翌74年。小学五年生だった。
 そしてそして、3曲目は「オール・マイ・ラヴィング」。
 例のイントロなしで♪Close Your Eyes とはじまった瞬間、涙が出てきた。“ヴァイオリン”ベースを抱えたポールが生で歌っている! まだ3曲目だが、この曲が聴けただけでももういいような気がした。おじさん・おばさんたちはみんな一緒に歌っていました。結婚式の二次会で、普通の居酒屋だったにもかかわらず、突然ギターを持ち出し、友人らとこの曲を大合唱してしまったのが思い出された。いやそんなことより、この曲は、ポールの曲には違いないが、ジョンの三連符のリズム・ギターあっての曲で、それをポールが演ってくれたのが嬉しい。
 ベースからギターに持ち替えての「レット・ミー・ロール・イット」。タイトなギター・リフ。レスポールのハムパッキング・ピックアップで拾った音がレアに聴こえ気持いい。
 こんな調子で書いていくと切りがない。
 全体の印象を一言で言ってしまえば、今回の世界ツアー「back in the u.s. Live 2002」 は、ジョン、ジョージ、そしてリンダへの鎮魂の巡礼といった趣がある。それはまた、ファンへの“癒し”をも意味している。僕らは、ジョン、ジョージ、リンダを失ったわけだが、何かが救われたような気にさせてくれるライブであった。


〔初出〕平成14年11月15日「創作の台所(Lycosダイアリー)」


ポール・マッカートニー来日
ビートルズ時代を含め4度目(1980年を含めると5度目)
2002年11月9日(土)成田空港着
11日(月)、13日(水)、14日(木):東京ドーム3回
17日(日)、18日(月):大阪ドーム2回、計5公演
19日(火)関西国際空港からロンドンへ帰国


【Set List】
01.Hello Goodbye
02.Jet
03.All My Loving
04.Getting Better
05.Coming Up
06.Let Me Roll It
07.Lonely Road
08.Driving Rain
09.Your Loving Flame
10.Blackbird
11.Every Night
12.We Can Work It Out
13.You Never Give Me Your Money / Carry That Weight
15.The Fool On The Hill
16.Here Today
17.Something
18.Eleanor Rigby
19.Here, There And Everywhere
20.Michelle
  Calico Skies(大阪公演のみ追加)
21.Band On The Run
22.Back In The U.S.S.R.
23.Maybe I’m Amazed
24.Let ‘Em In
25.My Love
26.She’s Leaving Home
27.Can’t Buy Me Love
28.Live And Let Die
29.Let It Be
30.Hey Jude
・・
Encore 1
31.The Long And Winding Road
32.Lady Madonna
33.I Saw Her Standing There
・・
Encore 2
34.Yesterday
35.Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Band(Reprise)〜The End


11年後の Paul McCartney 〜OUT THERE〜 2013


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