通期開催の「俳味と食味の12ヵ月」は、後期からも募集します。(受付開始8月21日)
講座コード: 06120039(公式ガイド)
〔講座趣旨〕
テレビ・雑誌等のマスコミに氾濫するグルメ情報への批判をこめ、日常の食と食味を現代文学に求める講義を通じて、食生活本来の在り方を考察する。具体的には広く読まれている現代小説を対照に、真実美味なる食とはなにかを求めて食生活の現在を作家と作品に求めて講義する。
〔講義概要〕
第1講 2006/08/05
講座テーマへの招待(ガイダンス)
樋口一葉の「たけくらべ」・森鴎外の「舞姫」に食が描かれていない。これはなぜか。文学と明治士族たちの精神風景。戯作者仮名垣魯文(野崎文蔵)「安愚楽鍋」と明治の食文化。文学に食と食味は馴染まない理由。
第2講 2006/08/05
自然主義文学の反俗精神
士族作家田山花袋、国木田独歩。詩から小説へ。「田舎教師」と「武蔵野」。夏目漱石の「坊ちゃん」「我輩は猫である」「三四郎」に見る食と食味。明治の食と食味を描く。
第3講 2006/08/26
現代俳句の食と食味
俳諧から続く「季語」を考察する。「木のもとに汁も鱠も桜かな 芭蕉」「うすめても花の匂ひの葛湯かな 渡辺水巴」俳句はなぜ食のタブーがないか。和歌の雅から俳諧の俗へ。季語を引き継いだ正岡子規。
第4講 2006/08/26
近代文学成立期の食へのタブー
志賀直哉の「小僧の神様」全作品中の唯一の例外。私小説の世界では、食のタブーからの完全解放者は開高健だった。「青い月曜日」から「耳の物語」へ。飢餓の反動としての開高健の食と食味。
第5講 2006/09/02
大量生産と大量消費の時代へ
中村真一郎の「雲のゆき来」。夜明けのブランデーコーヒーはグルメの時代を予告する。知識人たちの姿勢。福沢諭吉の「脱亜欧入」の思想。食のアメリカ化へ。
第6講 2006/09/02
美食の時代を告げる海老沢泰久
魯山人以降の美食の創造者辻静雄伝を描く「美味礼讃」ファッション化するグルメ。非日常化の食批判。推理作家大沢在昌の「闇先案内人」に見る食味の発見。大阪と東京その食味論。
第7講 2006/09/09
時代小説が描く食(1)
吉川英治「宮本武蔵」は食を描かない。以下、山本周五郎、柴田錬三郎、五味康祐まで、作中に食が登場しない。池波正太郎「剣客商売」で食味を書き尽す。グルメブームに応える作家の姿勢。時代小説作家の新しいモチーフの発見。
第8講 2006/09/09
時代小説が描く食(2)
平岩弓枝の「はやぶさ新八御用帳」が描く家庭料理。「御宿かわせみ」と江戸のそば。司馬遼太郎の歴史小説の食「韃靼疾風録」での女真人の大麦と粟。宮沢賢治の詩「雨ニモ負ケズ」の日本人の食生活。豊かさへの尽きない憧れ。
第9講 2006/09/16
俳句の季語から発見する旬の食味
煮て味のふかくかなしき蕗の薹 片山鶏頭子
口中に野の風つくし玉子とぢ 宮下初子
早わらびに一握の灰添え届けらる 久保田道子
紫蘇濃ゆき一途に母を恋う日かな 石田波郷
旬を忘れた食味を回復する季語。四季の恵みの中での食と食味を再検討する。
第10講 2006/09/16
量産と食品・食味の画一化批判
文学にみられる食と食味は、現在の食品・食味の画一化への再考を促す。推理作家服部真澄の「ディール・メイカー」の食。400グラムのステーキ。人はなぜ旬の食味を捨てたか。
第11講 2006/09/30
在るべき食生活とその未来への提言(総括)
いま読み直す池波・平岩の小説。懐古から現実へ。飽食の時代を終わらせる。食品・食味の画一化と社会構造。粗食・過食・美食の時代を経た食生活を再検討する。
第12講 2006/09/30
物質から精神へ
知の良心。辻井喬と城山三郎は食を描かない。現代文学に見る食と食味を通じて読者は今日の食生活をどう考えればよいか。小説はさまざまな問題を提起している。ここから明日への食生活の出発がある。
〔教材〕
小川和佑『名作が描く昭和の食と時代』(竹林館)1,575円
※学内書店「三省堂」にて各自ご購入ください。
講座コード: 06120021(公式ガイド)
〔講座趣旨〕
日本の四季をめぐる食と味を俳句という短詩に想を得て語る12ヵ月。その月ごとの旬の味を忘れて、私たちはもう長いこと過ごして来ました。食味と俳味を通じて、和の世界を再発見します。そこに自ずから、自然の恵みを受ける健康食と懐かしい素朴な味を蘇らせる日々の食卓からの日本の感性を講義します。
〔講義概要〕
第1講 2006/04/14
(ガイダンス)講義要目への招待
文学が描く食味の世界。季節の中にある日本固有の食味を俳句の季語に求めて。
「木のもとに汁も鱠も桜かな 芭蕉」は、花見の宴の一風景のように食味は季節の中で味わうもの。
第2講 2006/04/28
フィールドワーク(1)
新宿御苑の八重桜を観る。今年の名残りの花見を。
13時新宿御苑新宿門出発。苑内一巡。里桜を楽しむ。15時現地解散。
第3講 2006/05/19
土筆、山椒、たらの芽と桜に見る和の食の世界を。
「口中に野の風つくし玉子とじ 宮下初子」
第4講 2006/06/02
筍、トマト、わらびとからたちの花。青葉に寄せて。
「野蒜堀は今宵の酒をたのしみに 上村占魚」
第5講 2006/06/16
キャベツ、蕗、青梅と紫陽花に初夏の味と花を。
「女の胸擁くは甘籃つめたからむ 軽部鳥頭子」
第6講 2006/06/30
桜桃、メロン、らっきょうと花菖蒲。
「青梅や記憶に長き塀のある 藤後左右」
第7講 2006/07/07
枝豆、わさび、ところてんと沙羅の花。暑気を払う味の宇宙。
「ところてん煙のごとく沈みをり 日野草城」
第8講 2006/10/06
とうもろこし、栗、そばと菊の花。秋の恵みと長寿の花を愛でる。
「唐黍の葉も横雲も吹き流れ 富安風生」
第9講 2006/10/20
白菜、ゆず、こんにゃくと冬桜。初冬の味と小春日和の食材。
「みほとけに朱唇の名残り冬桜 鈴木勝女」
第10講 2006/11/10
フィールドワーク(2)
秋の雑司谷と椿山荘の紅葉を訪ねる。 13時JR目白駅出発。学習院大学、雑司谷鬼子母神、椿山荘園内見学、コーヒーブレイク。15時現地解散。
第11講 2006/11/17
くるみ、落花生、蕪と山茶花。冬を告げる味に詩を思う。
「山茶花や魚板もやさし女寺 石川桂郎」
第12講 2006/12/01
小松菜、芹、伊予柑と福寿草。歳末の食味と新年の用意。
「なづな打つ明治の母のわらべ歌 加藤三沙子」
第13講 2006/12/08
小豆かゆ、うど、うぐいす餅と椿の花。懐かしい味と春を待つ心。
「うす墨で『うぐいすもち』と書かれけり 高橋信子」
〔教材〕
小川和佑『旬の菜時記』(廣済堂出版)1,470円
※各自ご購入ください。←版元品切れのため、受講生にはコピーを配布。
〔その他〕
フィールドワークの交通費等は別途実費となります。
後期からの受講も可能です(詳細は、後期号パンフレットをご覧ください)。
前・後期通して8割以上出席者には履修証書を授与します。
−以上「明治大学リバティ・アカデミー総合案内」より転載−
★お問い合わせ・申し込みは、明治大学リバティ・アカデミー公式WEBサイトへ